ツールのイネオスロースター予想

ジロが終わってそう経っていないというのに、もうツールドフランスの季節がやってきた。その中で、今回はなんとなくイネオスのロースター予想をしていきたいと思う。

 

まず、今年のツールはそれほど山岳の難易度が高くない。その中でTTが2回あり、TTの得意なオールラウンダーが有利となるように設計されている。その意味で最大の優勝候補はログリッチェとポガチャルであり、それらに挑むイネオスはベルナルではなくGをエースに据えることになっている。

 

昨年と違い、Gは春先から調子を上げている。ツールを制した18年も春先から絶好調で、ティレーノ3位やドーフィネ優勝といった結果を残していたが、今年はそれ以上である。カタルーニャ一周ではアダム、ポートと共に表彰台を独占する3位に、ロマンディでは総合優勝、ドーフィネでも総合優勝のポートをアシストしながら3位と常に安定感抜群の走りを見せている。不安要素といえば、そのドーフィネにログラもポガチャルも出場していなかったことと、落車を2度もしているということだろうか。ロマンディでは雨の山頂決戦でスプリントに入る瞬間に手が滑ってハンドルを離してしまい落車しているし、ドーフィネでも最終ステージでダウンヒルの特になんでもないところで落車してしまっている。18年の優勝はGがノーミスで全てをやり過ごしたからこそであるし、本番で同じことを繰り返さないことを祈るばかりである。

 

そして、その脇を固めるサブエースたちも同じく発表となっている。それがカラパスとゲーガンハートだ。共にTTが大得意というわけではないが、抜群の登坂力を誇る19,20年のジロチャンピオンである。去年ツールデビューとなったカラパスは序盤からタイムを失ってしまい、サブエースとしての役割を果たすことが出来ず、ベルナル離脱後は逃げでチャンスを窺うばかりだったが、Gとフルームをツールのメンバーから外して急にジロ組から招集されてしまったという背景もあり、その後のブエルタではログラに肉薄しての2位だったことも考えると、最初からツールに照準を合わせたカラパスにはなんの心配もないように思う。ここまでシーズンのほとんどを自国エクアドルで過ごし、レースにはカタルーニャとイトゥリア、そしてアルデンヌクラシックにそれぞれアシスト待遇で出ただけだった。現在はツールドスイスに単独エースとして出ているが、丘陵ステージでアラフィリップやマチューといった屈指のアタッカーたちの攻撃にも常に最前列で反応するだけでなく、TTでもかなりの改善を見せている。こちらも期待大のエースだろう。

 

逆にもう1人のサブエース、ゲーガンハートはサブエースとしては少し物足りないかもしれない。昨年のジロ制覇で一気に頭角を表した点はカラパスと同じだが、やはり昨年のジロ制覇には多くのエクスキューズがついてしまう。ブエルタとの同時開催で選手層が薄かったことや、多くのエースやその重要アシスト、或いはチーム丸ごとレースから去ってしまうという事態が頻発したということもある。しかし、自信を得たことはどうやら間違いないようで、積極的なレース運びも、アシストとして山岳で猛烈な牽引を見せることもどちらも目立っている。ドーフィネでの早駆けスプリントや、LBLでの集団破壊など、昨年では考えられないものだった。もし総合で遅れが目立っても、最強のアシストに転身するだろう。

 

そして、これら3人を支えるアシストの中でも、何人かはほぼ確定と言っていいだろう選手がいる。それが昨年ツール3位で今年も絶好調のリッチーポート、ミスター最強アシストのクヴィアトコウスキー、そして昨年のグランツール最強山岳発射台ローハンデニスである。ポートは昨年のシャンゼリゼ表彰台で自らの成績を追い求めることに区切りをつけ、今年はかつてのチームに戻って最後のキャリアをアシストとして過ごすことにしたようだ。だが、諦めるのは少し早いようにも見える。もちろん今年もウィランガヒルを制したし、その後もバスクでアダムに次ぐ2位、ロマンディもGに次ぐ2位、そしてドーフィネでは総合優勝と、こちらもひたすらに安定感のあるリザルトを見せている。全てのTTでシングルフィニッシュしており、今年のツールへの相性も良好だろう。第一週のエースたちの調子次第では、ポートがエースやサブエースにスイッチしても面白いかもしれない。というか、昨年表彰台の選手をいきなりアシスト前提でこき使おうとするこのチームがおかしいのだ。

 

もう1人、クヴィアトコウスキーがツールに選ばれることに異論を唱える人などいないだろう。昨年はベルナルのリタイア後に感動的なステージ勝利をカラパスと共に演出した。山岳、平坦、ダウンヒル、全てで一線級の活躍をすることができるだけでなく、逃げやステージ狙いでエースを担うことも可能な、真の意味でのオールラウンダーである。DSMあたりの生え抜きスターとしてステージを毎年自由に狙っていたらどれだけの勝利を積み上げたのかも気になるが、彼はグランツールでは常にエースの右腕となることを選んできた。今年もその存在感は健在だろう。

 

そして、ローハンデニスもほぼ確定だ。テネリフェの高地トレーニング組で、現在スイスでカラパスのアシストに専念する彼は、昨年はゲーガンハートの貴重な山岳アシストだった。多くのチームが山岳トレインを構築できない中で随一の力を見せたサンウェブをたった1人で崩壊させたのがこの人である。ゲーガンハートの優勝はデニスの存在なくしてはあり得なかった。もちろん、山岳アシストとしても重要だが、デニスの役割はそれだけではない。2年連続のTTアルカンシェルであり、かつてのアワーレコード保持者である彼は、平地でも山岳でも抜群の仕事が出来る、イネオスの求めるアシスト像に完璧に合致するアシストだ。一つ心配なのは来年チームを離脱する噂が出ていることで、彼のファンとしては悲しい限りだが、それでもイネオスが彼を選出しないことはないだろう。ツールにそんな事情は関係ない。

 

この6枠は、かなり早い段階から分かりきっていた。予想の余地などない。問題は残された2枠だ。これまでのイネオスなら、ルークロウともう1人という選び方をしたと思う。もう1人はファンバーレやカストロビエホ、アマドールのような平地も山岳もこなす万能1軍アシストだ。しかし、今年もそうするのか、少し疑問がある。というのも、昨年は山岳での圧倒的な支配力というのがなくなっていた。ユンボに山岳トレインの先頭を守られ続け、帝国の威光は失墜した。カラパスの調子が上がらず、さらにシヴァコフが落車負傷したことも不運だったが、TTと登坂の両方に優れた万能アシストばかり重用した結果、山岳での支配力を完全に逸してしまっていた。その改善のためには、アシストの山岳比重を高める必要がある。それがポートやデニス、ゲーガンハートの採用だが、さらに平地系の選手をより山岳にシフトするという選択肢も存在するだろう。ルークロウを外し、万能枠をもう一つ増やしても面白いと思っている。

 

そもそも、今年は平地でイネオスにかかる負担がかなり下がる。これまでのツールは、イネオス対その他という構図だった。だからこそ平地ではルークロウが率先して集団を牽引する必要があったし、彼1人にかかる仕事量は凄まじいものだった。しかし、今年はユンボUAEマイヨジョーヌだけを狙ったロースターを組んでくる。頼まずとも率先して平地を牽引するだろう。常に先頭に位置するトニマルの姿が容易に想像出来る。だからこそ、ルークロウを選出せず、より山岳を意識した編成にしても問題がないのではないかと僕は考えている。それに、もったいないかもしれないが、デニスもクヴィアトも、平地で十分すぎるほど仕事ができるのだ。

 

そんな僕の2枠の予想は、ファンバーレとアマドールである。ファンバーレの仕事量は最早いうまでもない。ドーフィネでも中盤以降の全ての平地と丘陵、さらに山岳の登り口で集団牽引を続けていた。さらに、今年は北のクラシックでもしっかりと結果を出している。ドワルスドールでの優勝だけでなく、出場した全てで10位以内でゴールする安定感がある。イネオスからの信頼はクヴィアトにすら比肩するだろう。しかし、五輪のオランダ代表に内定している。イタリアはツール組を五輪に出さないという方針を打ち出しているし、場合によっては五輪を優先してツールを回避するということもあるかもしれない。特に、ドゥムランの調子次第ではエースの可能性すらあるのだから尚更である。

 

もう1人の候補アマドールはテネリフェ組のファンバーレと違い、少し確度が下がるかもしれないが、やはりイネオスからの信頼感は厚いだろう。昨年のブエルタではモビスター時代からの盟友カラパスの唯一の山岳アシストとして常にそばに居続けた。また、UAEツアーやドーフィネのように、山岳アシストが充実している場合は平地で淡々と仕事を続けてもくれる。かなり使い勝手がいいはずだ。

 

この2人の万能枠と同じ程度の序列にいると考えられる万能アシストがもう2人いる。それがカストロビエホとエディダンバーだ。カストロビエホはジロ組で、そちらでとんでもない量の仕事をこなしていたから選出を回避したが、そうでないならアマドールよりも優先されているだろう。特に20ステージの1級山岳2つを1人で引き続け、先行するバルデ、カルーゾを逃さなかったあの仕事がなければ、ベルナルのマリアローザはもっと危ういものとなっていた。本当にあの日の仕事は鬼気迫るものがあった。ジロの疲労が抜け、調子の照準を合わせることができれば、文句なしでロースター入りするだろう。

 

そして、エディダンバーもイネオス期待の若手であり、着実に成長を見せている。昨年はティレーノで骨折してしまい2度目のグランツール参戦とはならなかったが、今年もアシストとして目立っている。将来のエース候補として、経験を積ませるいい機会ではある。

 

また、さらに序列が下がるが、デプルスとカルロスロドリゲスも可能性がないわけではない。デプルスは昨年1年をほとんどレースに出ておらず、それは今年も同様だが、19年のツールでの存在感は凄まじいものがあった。とはいえ、前哨戦のスイス、ドーフィネどちらにも出場していない。逆に、カルロスロドリゲスはドーフィネに出場している。若干20歳のこの若手は、イネオスのドーフィネのロースターの中で、異端の存在だった。G,ポート、ゲーガンハート、クヴィアト、ファンバーレ、アマドールという超一流のエース、超一流のアシストたちに囲まれ、なんの実績もないこの若手が選出されるということが、この選手への期待感の高さを表している。実際、今年のプロヴァンスでの牽引は、先述のダンバー以上のものがあった。とは言っても流石に、どちらもないだろう。ブエルタならまだしも、ツールに遊ぶ余地はない。ベルナルほどの成績を残しているわけでもない。とは言っても、彼にワクワクしているのは僕だけではない。サプライズがあってもいい。

 

というわけで、ここまでの考察をまとめたい。

まず確定しているのがエースとサブエース格の3人と、アシスト3人の計6人。残った2人をルークロウと万能アシスト1人という選び方をするのではなく、万能アシストを2人揃え、平地よりも山岳を意識した編成にするのではと考え、その2人にファンバーレとアマドールを推した。そして、その他に候補としてダンバーなども面白いと考えている。実際にどうなるのかはわからないが、やはりトニマルが2級を超えても仕事をしているのに早々に遅れてしまう昨年のルークロウはかなり物足りなかったし、是非ともこういった意欲的なロースターの組み方をしてほしいところだ。今年は英国人エースが2人いるわけだし。

ジロ3週目

ジロの2週目まで、最強の選手も、最強のチームもそれが誰なのか誰の目にも明らかだった。ベルナルの傍には常に多くのアシストが位置し、エースがアタックしようとその刃がベルナルに届くことはない。山岳だけでなく、ダウンヒルで重要アシストのダニエルマルティネスを遅れさせることに成功させたとしてもプッチョやガンナといった選手がすぐさまダニマルを復帰させてくる。常に最前列に位置し、重要選手の逃げにガンナが目を光らせ続ける。他のチームには手を出す余地を探す方が難しかった。

 

特に、クイーンステージ16ステージで、ベルナルにとってはもう数秒など関係ないということを誇示した。このあとの山岳決戦では、優勝ではなく表彰台やトップ5を目指したレースをしなくてはならない選手が多くなってくるだろう。フルームの伝説の一日はカラパスとロペスのジャージ争いがフルームに利した。最早ベルナルは不可侵なのではないか。16ステージ終了時点では3位から7位の差が1分22秒にひしめいている。この中から表彰台を確かなものにするのは誰になるのだろうか。山岳はまだまだ残っている。

 

17ステージは1級山岳2つを登るステージで、既に総合から脱落した有力選手も多く含む逃げが先行した。ダンマーティンやグロスシャートナー、ノックス、ペドレロなどのクライマーとそれの目付にイネオスのモスコンというメンツでレースは展開し、逃げをどんどんと減らしながら最初の1級山岳をクリアする。その差は2分半ほどだったが、ダウンヒルの際にプロトンでクラッシュが発生してしまう。エヴェネプールやチッコーネが巻き込まれたこの落車で、二人はゴールこそするものの翌日のDNSを決めてしまった。そしてこれにより集団のペースが落ち着き、先頭との差が1分ほどでステージを争うことになった。カストロビエホが淡々とペースを刻むと、落車のひどかったチッコーネだけでなくウラソフやカーシー、バルデを脱落させていく。しかし、逃げにいたモスコンもおりて集団牽引のペースを上げていくが、それでもダンマーティンとのタイム差が縮まらない。それだけダンマーティンの登坂力が秀でていた。完全に小さくなったメイン集団ではエースに舞い戻ったアルメイダがアタックし、それに追随する形でサイモンも攻撃を仕掛けるが、それにすぐさまベルナルとダニマルが反応、総合2位のカルーゾが遅れるという展開になる。しかしその後の急こう配区間で再びイェーツがアタックすると、途端にベルナルがついていけなくなる。

 

力なく遅れ、さらに後方にいたカルーゾに追い付かれる中で、ダニマルの献身的なアシストが光った。この日時点で総合8位につける最強山岳アシストはベルナルとは対照的に3週目に調子を上げてきた。

 

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 拳を突き出し、同胞のエースを鼓舞するこの姿勢は、ベルナルの心に火をつけただろう。少しずつテンポを取り戻し、先攻するイェーツからの遅れを58秒に留めた。また、そのさらに前にはダンマーティンが独走でのステージ勝利を達成し、ハットトリッククラブに入会することとなった。昨ブエルタでのステージ勝利で長い不調から抜け出すことが出来たのではないだろうか。開幕直前に自分史上最高の状態といって臨んだジロは早々にタイムを失い続ける展開になってしまったが、これで報われたはずだ。ツールでのフルームとの共闘も楽しみである。そして、この3週間で初めてベルナルが弱さを見せた瞬間となった。依然としてリードは大きなものだが、心を折っていたライバルがやる気を取り戻したかもしれない。このまま逃げ切るのは、スカイ時代からの黄金ルートだが、ベルナルは背中に不安を抱えている。どうなるだろうか。

 

続く18ステージはド平坦ながら最後に厳しい丘が連続するレイアウトで、スプリンターが狙わない場合には逃げ切り濃厚のステージだった。チクラミーノを目指すサガンが目を光らせ続け、スプリンターを含まない大きな逃げが20分以上のリードをもって最後の勝負どころに差し掛かった。ロッシュやベッティオールのアタックで逃げが活性化すると、逃げ職人と化したレミカヴァニャが最初に明確なリードを築いて丘陵地帯をクリアしていった。後方ではロッシュとベッティオールが追走をかけるがロッシュがほぼ限界に近く、うまくローテーションすることが出来ない。独走力に秀でたカヴァニャに追い付くには、登りで仕掛けるしかなかった。

 

登りで10秒前後まで詰まるが下りと平地で20秒前後に開くというのを繰り返し最後の登坂に差し掛かると、カヴァニャのペースが目に見えて落ちてきた。チャンスと感じたベッティオールが仕掛けるとみるみるうちにタイム差が縮まり、さらに追い付くやいなやアタックをするとカヴァニャは全く反応することが出来ず力なく遅れて言ってしまった。下り基調の最終区間でその差が縮まることはなく、ベッティオールがようやくのプロ3勝目を達成した。メイン集団は20分以上遅れて平穏にゴール。総合勢にとっては心休まる一日となった。

 

続く19,20は最後の山岳決戦である。その初日は過日のロープウェイ事故を受けてコース変更がされており、1級山岳が一つスキップされることで難易度はすこし下がっているが、ベルナルにはこれが有利に働くだろう。最後の1級山頂フィニッシュですべてが決する一日となった。

 

 

有力選手を含まない逃げを、この日はイネオスではなくバイクエクスチェンジとドゥクーニンクがコントロールする。逃げから20秒ほどで最終山岳に突入するとそのままノックスなどが牽引し、総合で8分遅れのアルメイダがアタックし、先行を続ける。そしてそれに呼応するようにサイモンも仕掛け、アルメイダに追い付く。後方では一昨日の反省を活かしたベルナルがカストロビエホとダニマルを従えつつテンポ走行を続けている。イェーツが振り払ったアルメイダをイネオスが吸収するときにはカルーゾやウラソフはもう遅れていた。

 

ダニマルが仕事を終えると、ベルナル自らイェーツを追いかける。最後にアルメイダが飛び出しステージ2位を明け渡すことにはなったがひたすらテンポで走り切り独走でステージ優勝を決めたイェーツからの遅れを34秒に留めた。また、イェーツは総合2位のカルーゾからの遅れを20秒にまで縮めた。TTではカルーゾの方が優れているが、翌日の山岳の難易度を考えると、全ての可能性がまだ残っている。

 

21ステージはミラノでの30キロのTTであるため、20ステージが最後の山岳決戦となる。2000メートル越えの1級山岳2つとさらに1600メートルの1級山頂フィニッシュというグランツールの第3週にふさわしい難易度だ。ベルナルはカルーゾに対し2分29秒、サイモンに対し2分49秒のリードを持っている。これを最後の山岳だけでひっくり返すのは難しい。総合優勝を目指すには、より早い段階で仕掛けていくしかない。

 

そして、仕掛けるならバイクエクスチェンジだと思っていた。バーレーンは既に3人が落車リタイアしており、チーム力に不安がある。また、カルーゾにとっては優勝のために冒険をするよりも、綜合表彰台を確かなものとすることの方が重要であった。対するサイモンとバイクエクスチェンジは、既にブエルタを優勝している。総合3位で満足することはないだろう。そしてなにより、サイモンがジロに執着するには訳がある。あの年、あの日、サイモンの夢を完膚なきまでに打ち砕いたのは今のベルナルの所属するチームイネオス、旧チームスカイだった。そのときは最初の山場で総力戦を仕掛けたスカイトレインプロトンが破壊され、サイモンもその犠牲となった。ドゥムランとカラパスとマスとピノという実力者だけが残ったが、それすらもフルームから3分以上遅れてゴールすることしか出来なかった。あの日のやり返しにはこれ以上ない状況とレイアウトである。総合優勝を目指すには、遅くとも2つめの山からエースだけの争いにしていく必要があった。

 

そのためにはなによりもダニマルを脱落させる必要がある。ジロ全体を通じて最強の山岳アシストとして存在感を示している。しかし、ダウンヒルで少し遅れを取る場面も見せており、この日はテクニカルで長いダウンヒルが2つも続くから、それを利用しない手はなかった。

 

逃げはグロッシャートナーなどを含む8人。それをバイクエクスチェンジが牽引し最初の1級の頂上を目指すが、逃げの中にいたDSMのニコデンツが集団に吸収されるタイミングでDSMプロトンの先頭を占拠した。そしてそのままデンツやロッシュを中心に高速での牽引を見せ、先頭のまま1級をクリアした。

 

そして問題のダウンヒル。先頭に位置するDSM勢のバルデ、ストーラー、ハミルトンが飛び出すと、リスクを取りたくないイネオスはそれを見逃す。しかし、その動きに呼応する形でカルーゾとビルバオも抜け出すと、平地区間でその2チームと先行していた逃げ集団が合流し、協調を始めた。逃げ残りは基本的に牽引しないしする必要がなかったが、総合逆転を目指すカルーゾの同胞、ヴィスコンティなども牽引に加わり、みるみるうちにリードが拡大していく。後方ではプッチョ、モスコン、ナルバエスがカルーゾを捕まえようと牽引していくが、どうにも捕まえることが出来ない。結局、逃げ残りは少しずつ数を減らしてはいったものの、1分ほどの差で2つめの1級山岳に挑むことになる。

 

 

グロッシャートナーが脱落し、ストーラーが脱落し、4人だけとなった集団を、バイクエクスチェンジは追走することが出来ない。全てがイネオスに任されたが、ベルナルの傍にもカストロビエホとダニマルがいるだけだった。しかし、そのカストロビエホの仕事がすさまじかった。4人のクライマーで回す先頭に対し、カストロビエホは1人だけでひたすらペースを作っていく。結局、登坂とその後のダウンヒルカストロビエホだけでクリアした。そのタイム差は広がるどころか少し縮めることにすら成功した。

 

そして勝負はエース同士の登坂力に委ねられる。バルデもカルーゾもベルナルもそれぞれ横には一人しか残っていない。まずはハミルトンが、そしてビルバオが脱落すると、これまでアシストとしてグランツールの総合エースに仕え続けたクライマーが、初めてエースとして粉骨砕身のアシストに感謝と覚悟を示した。

 

 ここまで押しも押されぬアシストとして尽くし続けたカルーゾだからこそ、これに応える方法など、勝利以外に存在しないとわかっていたのだろう。急こう配区間でバルデを振り切ると、追走をかけるベルナル、ダニマルコンビも届かないスピードでゴールを駆け抜けた。プロでほとんど目ぼしい勝利のなかったカルーゾにとって、あまりに大きすぎる勝利だった。そして、後方では無力にもイェーツが遅れていった。総合表彰台は死守したが、優勝はおろか総合2位も遠のいてしまった。

 

ベルナル、カルーゾ、サイモン、そして4位のウラソフはそれぞれがほとんど届かないタイム差で最終日のTTに臨むことになる。

 

最終日は昨年同様ミラノでの個人タイムトライアルだが、昨年の倍ほどの距離である。フルフラットながらコーナーが多く、細心の注意が必要だった。注目はガンナで、綜合上位もほぼ動かないことが予想される。ラインレースではないが、祝福の日となりそうだった。

 

しかし、優勝候補筆頭のガンナを悲劇が襲う。終盤でパンクをしてしまい、バイクチェンジを余儀なくされた。インディ500のピットストップかのようなスピードでバイク交換をし、すぐさま走り出したが、このパンクで20秒は失っただろう。これまでの中間計測、最終タイムすべてで暫定トップを出したが、カヴァニャなどを待つことになってしまった。そして、そのカヴァニャも不運に見舞われた。第2計測ポイントまで良いペースで走り、最終区間でのガンナのタイムロスを考えると十分にステージ優勝が見えていたが、終盤の左コーナーを失念し全速力でコーナーに入ってしまった。結果バリケードに激突、落車し、すぐに走りなおしたがガンナに届くことはなかった。

 

その後フォスやアルメイダといったクロノマンもこの2人のタイムに挑戦したが、アクシデントに見舞われた2人を脅かすことは出来ず、ガンナのステージ優勝は確かなものとなった。そして、注目はベルナルへと集まっていく。

 

総合上位はそれぞれが2分ずつほど離れており、お互いにコーナーなどのリスクを取らない、安全なタイムトライアルとなった。アルメイダ、ダニマルが5,6位にジャンプアップこそしたものの、上位4人は安全に、3週間の戦いをかみしめながらゴールすることとなった。そして、最後にゴールラインに飛び込んだのは、両手をあげて勝利を祝うベルナルだった。

 

ベルナルにとって、この1年間、あるいは2年間はとても難しいものだったのだろう。若くしてツールチャンピオンになり、目標を失った。その中でポルタル監督を亡くし、さらにコロナ禍でツールでの単独エースとなり、さらにそこでの故障離脱と、去年は失意の一年だった。

 

しかし、ここでベルナルは勝負の世界に戻ってきたことを示した。それは背中の懸念を払拭し、勝負のレベルにあることを示したというだけではない。勝負を楽しみ、勝利を追い求める気持ちを取り戻したことも意味する。ツールはGやカラパスが狙うが、まずはブエルタでのグランツール全制覇を目指していくことになるだろう。

 

そして、カルーゾは面目躍如の活躍だった。アシストがふとしたすれ違いでエースとしてその才能を開花させるのは、ロードレースの妙であり魅力である。今後カルーゾが何を目指すのかはわからないが、とてもいい物語を見たような気持ちである。特に、ランダ、カルーゾにプールス、ヘイグ、ビルバオと揃っているこのチームでは、グランツール3強チームに割って入っていくことが出来るのではないだろうか。少なくとももビスターよりも高いチーム力を持っていることは確かなように思う。

 

サイモンは、またリベンジの旅を続けることになってしまった。しかし、3位表彰台も素晴らしい成績であることに変わりはない。アダムとの決別でサイモンは自身がチームのエースとしてすべての責任を持たなくてはいけなくなっている。来年以降のチーム編成はわからないが、ジロに集中すると言っている余裕はおよそない。ジロへの野望とどう折り合いをつけていくのだろうか。

 

グランツールはやはり良い。3週間あるからこそ、全員が毎日本気ではないし、絶好調でもない。良い瞬間もあれば悪い瞬間もある。勝者は一人だけじゃない。カルーゾの総合2位など、その代表例だろう。また、エースだけがフィーチャーされがちなロードレースだが、それもアシストなくしては成立しない。今回はそれが際立つ大会だった。

 

特にダニマル、カストロビエホ、ビルバオの仕事っぷりはすさまじかった。もちろん、平地番長のガンナも忘れてはならない。それ以外にも、多くの選手がいい仕事をし続けたのだろう。イネオスも、バーレーンも、アシスト全員が最終表彰台に上がることが出来て、本当によかった。stay cool stay calmと言い続けていたベルナルとイネオスが、表彰台でBGMのQueenを叫んだとき、彼らが本当に変わったのだなと感じた。ベルナルは勝負を楽しむ攻撃的なスタイルに戻ってきているし、彼らもmore racing styleを続けていくだろう。イネオス推しとしては、今からツールや秋のクラシックシーズンが楽しみで仕方がない。ほんとうに、良いジロだった。やはりグランツールは素晴らしい。

ジロ第2週振り返り

第10ステージまでは、秒を争っていた。それはスプリントでも、総合でも変わらなかった。エヴェネプールとベルナルが中間ボーナスタイムで争ったのが良い例だろう。しかし、ここからの総合争いのフェーズに入る。ベルナルの言葉を借りるなら、ここからは分差の戦いだ。

 

その戦いの幕開けにふさわしいステージが休息日明けに設定されている。それがストラーデビアンケを模したグラベルステージだ。トスカーナに入るラスト70キロの内半分が未舗装のグラベルロードで、当然多くの激坂もテクニカルなダウンヒルも含んでいる。過去にストラーデビアンケでリザルトを残している総合系もいる中で、グラベルの経験の浅いエースたちはどうなるのか、全く予想が付かなかった。もしパンクにでも会おうものなら、一瞬でジロそのものを失いかねないほどの危険を孕むこの難関ステージでも、絶対的な優勝候補はベルナルだった。今年のストラーデビアンケではマチュー、アラフィリップという最強のクラシックハンターに次いで3位となっていたし、先日のグラベルフィニッシュでも圧倒的な加速でステージ優勝している。元来マウンテンバイクにルーツをもつ彼は、たとえばトラック出身でほとんどグラベルの経験のないサイモンイェーツなどに比べて大きく有利なのは明らかだった。そして実際にそれは現実のものとなった。イネオスはグラベルに入る瞬間にベルナルを最前列に置き、そのままアシストと共に猛加速することにだけ集中しており、逃げに10分以上のタイム差とステージ優勝のチャンスを明け渡した。自身の日常業務から解放されフレッシュだったガンナは直後にベルナルを従えながら最初のセクターに突入する。そのスピードは凄まじいの一言で、みるみるうちに集団がちぎれていく。この一発のアタックだけで、サイモン、アルメイダ、エヴェネプール、ウラソフ、ヒューカーシーといった総合勢のほとんどが取り残されてしまった。流石にこれだけのメンツが揃うと後の舗装路での合流を許すことになってしまったが、その後もイネオスが集団の主導権を握ることをはっきりと示した。続く第2セクターでは特にアタックをしなかったが、第3セクターで再びイネオスが猛攻撃を仕掛けた。

 

先日のグラベル区間でも獅子奮迅の活躍をしたナルバエスとモスコンが加速をすると、たちまちエヴェネプールが遅れていく。アルメイダも自身のチャンスを狙いアシストを一時拒否するなどソレル状態になっていたが、最後には諦めてエヴェネプールのアシストに勤しむこととなった。その後は大きな分断なく全てのセクターを消化したが、その先にはまだ山岳が残っている。最初に仕掛けたのはブッフマンだった。アシストを残すEFの高速ペースから1人飛び出すと、一定のペースで先行する。そして二バリだけでなくチッコーネなども遅れ出す中で加速し、ブッフマンに1人だけ追いつく選手が現れた。それがまたもやベルナルだった。山岳をベルナル先頭でクリアすると2人で最後のダウンヒルをやり過ごし、そのまま市街地への登りスプリントのゴールではここでもライバルを置き去りにした。結局、この日エヴェネプールは2分を失い、総合2位と繰り下げヤングライダージャージをウラソフに明け渡すことになってしまった。逆にベルナルはこの日も全てのライバルからタイムを奪うことに成功した。特に最終TTでの大逆転の可能性の残るエヴェネプールを総合争いから脱落させたのはあまりに大きい。

 

もちろん、最速でゴールに駆け込んだのはベルナルではなかった。逃げが明確にステージを狙えるとわかると、その中での争いは苛烈を極めた。最終山岳での度重なるアタックの末に決まったコーヴィとシュミットの先行集団はそのままペースでダウンヒルをクリアし、スプリントで雌雄を決することとなった。そして軍配はシュミットに上がる。昨年はスポンサー問題に頭を悩まされた苦しいチームに待望の今季2勝目をプレゼントするとともに、自身にも嬉しいプロ初勝利となった。

 

第12ステージはほとんど平坦のない丘陵ステージで最後はスプリントという、これ以上に逃げ向きなものなど存在しないかのようだった。実際に逃げへのアタックはいつまでも続き、その後方では落車も続出した。モビスターの単独エースのソレルや、既にステージを勝って山岳賞に意気込むマーダー、さらにマリアローザを一時着用していたデマルキなども落車に巻き込まれ、リタイアを余儀なくされた。また、マスナダやドーセットといった重要なアシストも体調不良でリタイアすることになっている。逃げは1時間半かかってようやく確立された。既に総合争いから完全に脱落した元総合エースのジョージベネットや、山岳賞職人のブシャール、ジロ8勝のウリッシなど、あまりに豪華なメンツを含む16人の逃げは、イネオスから12分のタイム差を許され、その中からステージを争うこととなった。

 

この中でも特に強いマークに合っていたのがベネットで、最後の山岳では誰もうまく協調することができなくなっていた。ヴェンドラーメが独走で山頂を目指すと、ベネットを中心にハミルトンとブランビッラも含めた3人が後ろから合流する。この4人の中ではハミルトンが特にスプリント力に秀でており、逆に最も劣るのがベネットだった。最後の数キロだけは平坦な今日のレイアウトで、常にツキイチを守ろうとし、ブランビッラといざこざをしているベネットを尻目に、少し前をいくハミルトンがアタックを仕掛けた。ヴェンドラーメはすぐさま反応しついていくが、残りの2人は牽制に入ってしまい追走を組織できない。最後は前の2人でのマッチスプリントとなり、しっかりと持ち前のスプリント力で勝利を自らのものとした。その後ろでは2人がいつまでも小競り合いを繰り返し、最後には斜行、レース後の口撃にまで発展したが、やはりこの2人は山岳で飛び出せなかったことが尾を引いてしまった。

 

メイン集団は二バリがダウンヒルで飛び出し、それを追いかけようとしたモスコンが落車してしまうなどのトラブルこそあったものの、総合エースで十分なタイム差をもつベルナルは落ち着いて対処し、ニバリ以外のほぼ全員が同タイムゴールをして1日をまとめた。

 

続く第13ステージは久しぶりのフルフラット、一つのカテゴリー山岳もないピュアスプリントステージである。多くのスプリンターがレースを後にしており、またスプリンターのチャンスも残り少ない中で、最強のスプリンターは誰なのか、注目が集まる。特にサガンが勝つようなことがあればほとんどポイント賞を確実なものにすることができる。

 

逃げはお馴染みのプロチーム3つから1人ずつ、3人の逃げであり、集団もイネオスではなくスプリンターチームがしっかりと射程圏内に捉え続けていた。そしてゴールラインまでわずかといったところで逃げをキャッチするとそのまま各チームがスプリントトレインを構築する。DSMUAEコフィディスなどが最初の主導権を握るが、どうやら早すぎたようでフラムルージュではボーラとユンボが先頭に位置してきた。初日のTTで2位につけた独走力を持つアッフィニがフルーネウェーヘンを引き上げようとするが、しかし、彼のエースはついていくことができない。エースを諦め自らの早駆けでの勝利を試みたアッフィニは、そのまま行ったかのようにも見えた。しかし、それを1人冷静に対処したのがニッツォーロだった。早くにアシストを失ったガビリアがアッフィニに自ら対応をすると、まずはそれについて行き、さらにそこから再加速をしアッフィニのスリップストリームに入り、さらに三度加速してアッフィニを差し切った。極めて冷静に状況を判断し、ガビリア、アッフィニと最適にラインをとっていったことで独走力の高いアッフィニをなんとかかわし、そして自身初のグランツールステージ優勝を成し遂げた。日本語では2位ッツォーロだったり、英語ではNi22oloなどと誹られていた彼も、イタリア選、欧洲選、ジロとそろそろ勝ち癖がついてくるのかもしれない。

 

そしていよいよやってきた14ステージ。それは魔の山ゾンコランへと駆け上がる、総合を左右する1日である。最後には28%勾配も待ち受けている。これまでフルームのような真のチャンピオンにだけその栄光を授けてきたその山は、今年誰に微笑むのだろうか。

 

序盤で決まった逃げの11人がイネオスに8分の自由を与えられると、アスタナがゾンコランはチャンピオンにこそふさわしいと本気で逃げを追走する。その逃げの中にはベネットやそのアシストとしてのアッフィニ、さらにモレンマとその同胞モスカといった強力な選手とチームを含んでいた。アスタナの牽引は下り区間で分裂を招き、一時アスタナ4人にベルナルカスとロビエホとビルバオだけの状態にもなったが後続が問題なくジョインした。しかしこの一連の動きで疲弊した集団は再び逃げにタイムを与えることとなり、結局ゾンコランには6分半のタイム差でそれぞれ挑むことになった。

 

逃げの中ではアッフィニやモスカといった平地系の選手がそれぞれのエースのために全開で牽引し、エースに望みを託すが、最初にアタックを仕掛けたのは彼らではなくトラトニックだった。さらにそれを単独で追いかけるのはベネットでもモレンマでもなく、グランツール初出場のフォルトゥナートだった。結局、この2人は精彩を欠いたまま1日を終えることになってしまう。集団は依然としてアスタナが牽引するがアシストを全員使い切ってしまい、主導権をイネオスに明け渡さざるを得なくなる。そのイネオスはモスコン、ナルバエスカストロビエホと順に鉄壁のリレーでどんどんと他のアシストを削りとっていく。そしてその牽引がダニエルマルティネスに移った時、ここまでひたすら沈黙を続けていたサイモンイェーツがついにアタックを放つ。この一撃はただ1人を除く全ての選手を置き去りにしていった。そして脇目もふらずひたすらあの特徴的なダンシングを続けていく。しかし、ベルナルは常に彼のホイールにしっかりとついていた。最後の数百メートルでベルナルが加速を始めるとサイモンはそれに反応することができず、先行するベネットやモレンマまでを捕まえていった。しかし、その先にはまだ3人いた。それがフォルトゥナート、トラトニック、コーヴィだ。トラトニックを途中で捕まえたフォルトゥナートは最も厳しい区間でアタックを繰り出し筋肉質のクロノマンを振り払い、そのまま踏み続けた。スポンサー枠との批判の絶えなかったエオロコメタにとって待望の1勝は、あまりに大きな1勝となった。プロ初勝利、チーム初勝利がグランツールの、しかもゾンコランでのものである。これを受けてのコンタドールの悦びようには、こちらも嬉しくなってしまう。そしてここでも全てのライバルからタイム差を奪ったのはベルナルだった。サイモンの会心の一撃さえもさらりとかわされてしまってはなす術がない。特にここでも1分半を失ったエヴェネプールの総合優勝の目はほとんどなくなってしまった。2位に浮上したイェーツにも1分33秒のリードを持つベルナルの敵は最早バッドデーやトラブルのみで、彼らのライバルには目標の変更を余儀なくされる選手もいるだろう。

 

この魔の山を終えて、最強がベルナルであるのは疑う余地がない。そしてその最大のライバルはイェーツとなった。この2人の争いは、そしてこの2チームの争いは縁深いものがある。まず、この2人の争いとして記憶に新しいのはなんといってもベルナルのツール制覇を決定付けたイズラン峠での一件である。あの日は最後の一級への下りで土砂崩れが発生し、レースがニュートラルになっていた。その直前の超級でのタイム差がそのままステージの成績として反映され、ベルナルがマイヨジョーヌを獲得したわけだが、そのすぐ後方でサイモンイェーツが追いかけていた。総合争いははなから双子のアダムに譲りその望みが絶たれたと見るや否や自身のステージにシフトチェンジし2勝を稼いだサイモンは、この日もベルナルとのマッチアップに向けて得意のダウンヒルでベルナルに追いついていた。しかしレースがニュートラルになり勝負はお預けとなってしまった。そしてさらに遡ること1年、サイモンはイネオスの前身、チームスカイに辛酸を舐めさせられていた。伝説のフルームの逆転劇はゾンコランから始まった。そしてその後のフィネストレで大勢は決してしまい、サイモンはその日だけで40分を失うこととなった。そもそも19年、総合狙いをツールではなくジロで行ったのは、ここでの忘れ物を取り返すためだった。そしてそれは失敗に終わり、昨年もまたジロの呪縛から解かれていない。今年、18年の序盤のサイモンのような支配的な強さを見せるベルナル以上に、恰好のリベンジの対象などいない。

 

是非ともこの2人には気持ちのいい勝負をしてほしいと思う。そしてその2人にとって、翌第15ステージは小休止の1日となった。スタート直後の逃げへのトライで緊張状態にあった集団後方で大クラッシュが発生し、ブッフマンやファンエムデン、ゲレイロなどを失うことになったプロトンはその後は落ち着きを取り戻し、この日も集団に逃げ切りのチャンスを明け渡すこととした。何しろこの日はテクニカルなダウンヒルの最中にひたすら強い雨が降っており、誰もそこでの争いを望まなかった。17分ほどのリードを貰った逃げは、残り40キロ程度のところからステージへのアタックがかかり始める。特に意欲的だったのがカンペナールツだった。TTでの活躍を諦め逃げスペシャリストへの転身を目指す彼は平坦でのアタックを繰り返し、どんどんと集団を小さくしていく。そしてコーナーを攻めに攻め、ついに彼についていけるのはリースベックだけとなった。スプリント力ではどう考えてもリースベックの方が優れていたが、悪天候の中で思考が鈍ったか限界に達していたか、リースベックが早駆けを敢行する。それをしっかりとやりこなして差し切ったカンペナールツが嬉しいグランツール初勝利、そして今ジロチーム3勝目を挙げた。解説陣にスプリントの展開でカンペナールツが勝つことだけは絶対にないとまで言われていたが、勝つことができたのは脚質の改善の結果なのだろうか。勝利のインタビューではチームのスポンサー獲得やチーム理念について言及する優しさを見せた。ぜひ彼らには良いスポンサーがついてほしいと心底思う。というか、NTTが1年で撤退するの、日本企業としてダサすぎんか?総合は特に争うことなく17分後に帰ってきた。モレンマが前にいたことが幸いし、トレックがチーム総合でイネオスを逆転している。

 

そして第2週を締め括るのは、今大会のクイーンステージである。チーマコッピのポルドイ峠を含む3つの2000メートル級の峠をクリアしコルティナダンペッツォにフィニッシュする獲得標高5700メートルという鬼畜極まりない、今年の全てのグランツールの中でも最難関と言って差し支えないステージである。ゾンコランが可愛く見えてくる。

 

しかし、現地の悪天候がそれを許してくれなかった。結局、ポルドイとフェダイアをスキップし、新たにチーマコッピとなったジャウ峠へと直接向かい、その後ダウンヒルをして市街地にスプリントするようにコース変更が為された。212キロの5700メートルの獲得標高が詰め込まれたレースは155キロ3900メートルとなり難易度が緩和したかのように見えたが、しかし、依然として厳しいものであるのには変わりなかった。

 

レース映像を届けるのすらままならない混沌とした環境の中で、ニバリ、フォルモロ、ダンマーティン、アルメイダといった遅れてしまった総合エース格の勢揃いした逃げが決まると、それをイネオスが5分前後でコントロールする。山の一発勝負になり逃げ切りを目指す選手が多くなりイネオスのコントロールでもどうにもならないかと思われたが、これにEFが協力し、イネオス以上のペースで集団を牽引した。ジャウ峠の正式な登坂が始まる頃には逃げとのタイム差を6分から2分程度に縮めるどころか、集団を8名にまで絞ってしまった。逃げの入り口で遅れたエヴェネプールはもちろんとして、トラブルに巻き込まれたウラソフやゾンコランで復活したかに見えたサイモンやトビアスフォスも集団には残っていなかった。それほどまでに集団を破壊した瞬間を見ることは出来なかったが、EFの牽引、特にサイモンカーの牽引が凄まじかったのは明らかだった。

 

しかし、サイモンカーの仕事が終わる瞬間にアタックを仕掛けられたのはチームリーダーのカーシーではなく、またしてもベルナルだった。そしてこのアタックにも誰もついていくことができない。逃げから粘っていたフォルモロやアルメイダ、ヴェンドラーメも一瞬で抜き去ると、そのまま先頭でチーマコッピを通過した。その45秒後には思わぬ好走を見せるカルーゾが、そしてそのまた30秒後方を少しずつ調子を上げてきたバルデが追いかける。テクニカルなダウンヒルでリスクを犯す必要のないベルナルに対し、タイム差を最小限に留めなくてはいけない追走は少しずつ詰め寄っていくがそれでも捕まえるには至らない。結局、バルデとカルーゾは途中で合流しベルナルから27秒後方でゴールすることとなった。その後ろではさらに30秒以上開いてカーシーやチッコーネ、アルメイダがゴールし、ウラソフやサイモンは2分以上を失う結果となっていた。

 

これほどまでに圧倒的であれば、最早ベルナルは秒の争いをする必要がない。第9ステージでは自身の勝利に最後まで気付かなかったが、今日は誰よりも強いことなど、どれほど混沌としたレースであっても明らかだった。そして、自身こそ最強であることを全員に見せつけ、心を折る必要があった。

 

ベルナルは最後の500メートル。漆黒のレインジャケットを脱ぎ、そしてしっかりと背中にしまい、マリアローザを誇示してゴールした。ゴールの直後には、初めて彼が雄叫びをあげるのが見てとれた。それは彼の背中の不安を払拭し、彼がチャンピオンに戻ってきたことを示すものだった。このために失った時間は5秒では済まないだろうが、これによって得たものはタイム以上に大きいはずだ。

 

まず、2位のサイモンイェーツを脱落させ、新たに2位になったカルーゾとのタイムも2分24秒にまで広げることに成功した。そして3位のカーシーから7位のバルデまで、1分22秒しか開いていない。これまで、ベルナルからTT以外でタイムを奪うことに成功したのは、エヴェネプールが中間スプリントで1秒を2度取れただけである。他の選手はただの1秒もベルナルに先んじることが出来ていない。そんな中でゾンコランでのアスタナや今日のEFのような総力戦を仕掛けても、返り討ちにあうだけなのは明白だ。もう彼らにはバッドデーを祈るしかできない。しかし、表彰台を目指す戦いはどんどん混戦になっている。カルーゾの安定感は光るものがあるが、カルーゾまでなら多くの選手が射程圏内であるし、彼のチームには多くの不安がある。

 

つまり、今後は総合優勝へのレースではなく、表彰台へのレースをしなくてはならないチームが増えてくる。ベルナルをライバルと公言できるチームはもういない。それほどここまでのベルナルは圧倒的だ。18年のサイモンでさえ、2位のドゥムランはあの日の時点で28秒差につけていた。今回はその比ではない。

 

もちろん、第3週にはまだまだ厳しいステージが残っている。山頂フィニッシュが3つと30キロのタイムトライアルである。しかし、その何処かでバッドデーを迎えてもどうにかなるタイム差がついてしまった。そもそも、彼らは最もグランツールを勝っている経験のあるチームであり、彼自身もツール制覇の経験がある。ジロにサプライズの余地は残っているのだろうか。

 

そして、もう一つ気になるのがジョージベネットである。ユンボもイネオスのような巨大戦力を抱え、特にグランツールの総合でも素晴らしい成績を残し続けている。特にログリッチェは現役最強のグランツールライダーの1人である。そしてその傍らにはサブエース格に復帰を発表したドゥムラン、クライスヴァイクが控え、そのアシストとして同じく最強山岳アシストのクスがいる。ヘーシンクとベネットも同様だ。そして平地ではトニマルが、さらに真の意味でオールラウンドのワウトもいて、グランツールを狙うには完璧すぎる布陣である。サブエースやツール以外でのエース格としても当然ベネットよりもクライスヴァイクとドゥムランが優先され、さらにクスでの野望も未だ潰えていない。そんな中でベネットにとって今回のジロは自身の勝利を終えるほとんどラストチャンスだったはずだ。

 

アシストは確かに豪華とは言えない。フォスとボウマンだけでイネオスに太刀打ちしろというのは無茶である。しかし、にしたって酷い。かつてはこのチームの総合エースだった男ではないか。それが早々にタイムを失い、何度も逃げに挑戦しているが、その中で何も結果を残せていない。エースとしてマークされるのは慣れているだろう。逃げの相手など、ほとんど全員格下の中で牽制してどんどんとチャンスを失い、さらに逃げにアシストを伴ってもプロチームの選手や到底クライマーと言えない選手から淡々と遅れていくのは見ていてとても寂しいものがある。チームも目標を完全にフォスのシングルフィニッシュにシフトしている。フォスもいつかこのチームでエースとなる器だ。ベネットは好きな選手だっただけに、残念な思いが強い。エースとしてのプライドをもっと見せて欲しかった。やっと得たニュージーランドチャンピオンジャージを、ベルナルのように見せびらかさないでいいのだろうか。第3週の逆襲に期待したい。

 

ジロ 第10ステージまでを振り返る それとイネオスの今後のクラシックの展望も

平穏ながらサプライズの多いジロは第5ステージに意図せぬ総合での脱落を招いてしまった。それでもレースは続く。プロトンは第一週の総合の山場へと差し掛かる。

 

今年のジロはとにかく天候に恵まれない。最初の山頂フィニッシュとなる第6ステージも酷い雨模様だった。前日にエースを欠いたバーレーンを中心に始まったアタック合戦は、中々決着がつかない。逃げが確定したのは随分と時間が経ってからだった。モホリッチとマーダーを含む逃げは6分前後のリードで中盤の山岳をクリアしダウンヒルをクリアすると、その後ろではイネオスの総攻撃が始まる。谷あいの風を利用し横風分断に打って出ると、まずはマリアローザのデマルキが遅れた。総合勢のほとんどは無事だったが多くのアシストが後方に取り残されたのを見ると、40キロ以上続くダウンヒルをガンナが一人で引き切ってしまう。終わってみれば最後の2級山岳の登り口の時点でタイム差は3分を割っていた。一方の先頭ではマーダーのアシストに徹したモホリッチなどが脱落しマーダー、カタルド、モレンマの3人に。後方でハイペースを刻み続けるイネオストレインが、そのリードを刻一刻と削り取っていく。カストロビエホが牽引を終えるとようやく他のチームも先頭に顔を出してきた。それがドゥクーニンクのマスナダとアルメイダで、この牽引によってどんどん集団は絞られていく。それを利用してセカンドエースに昇格したイネオスのダニエルマルティネスがアタックをすると、集団から10秒前後の位置でペース走を開始した。ドゥクーニンクのアシストがダニマルをキャッチし仕事を終えた瞬間に本命のアタックをベルナルが繰り出すと、これにサイモンやウラソフはついていけない。結局、チッコーネ、エヴェネプール、さらにダンマーティンという4人だけがついていく。ベルナルの一人引きで唯一の逃げ残りのマーダーを猛追するが、マーダーもなんとか粘り逃げ切りを確定させた。

 

パリニースでの悲劇の再来とはならなかった一方でベルナルはしっかりと2位に入りボーナスタイムを獲得。目下最大のライバルであるエヴェネプールはスプリントに参加出来ずに4位となっており、着実にTTで奪われたリードを取り返していっている。

 

マーダー、モホリッチはエースの離脱の直後から懸命にアタックを続け、いきなり結果を出した。その姿勢はとても素晴らしい。また、背中の状態が不安視され続けているベルナルも、最高の状態であることを示した。現在常に山岳でタイムを稼ぎ続けているのがベルナルであり、もう既にエヴェネプールとの一騎打ちの様相を呈してきてすらいる。もちろん第3週の厳しい山岳でどうなるかはお互い未知数すぎるが、この2人はそれぞれチーム力が最も高い2チームの絶対的エースであり、今後もこの2人のバチバチは楽しみである。

 

続く第7ステージはスプリントが予想されていながら、ゴール直前に12%勾配が用意された少し特殊なレイアウトとなっていた。登れるスプリンターの代表であるサガンが勝ち切るのか、それともリードアウトに守られたピュアスプリンターがポジションを維持し、そのまま勝ち切るのかといった風に、予想が難しかった。特に、登れないスプリンターの代表であるユアンは、ミラノサンレモではポッジョの登りでイネオスのトレインの直後に位置し続けたのが記憶に新しく、どうなるのかが注目された。その結果は驚きの一言で、リードアウトを全て使い切っても前に位置し続けたユアンがガビリアの早駆けにも自ら反応し、そのままゴールラインを先頭で通過するという圧倒的なものだった。クラッシュや総合での争いもなく、平穏な一日の終わりは、ユアンがその強さを見せつけ、チクラミーノジャージに着替えることで完結した。

 

第8ステージは4級山岳にフィニッシュする、逃げ、パンチャー向けのステージ。翌日の厳しさを考えると総合勢の争いは起きにくく、逃げの争いはし烈を極めることが予想された。その予想に反してか、そのままかはわからないが、横風分断を狙ったイネオスがベルナル自らアタックに打って出るなど、大波乱となり、逃げが確定するのは1時間を待つ必要があった。そうして出来た逃げは9人。カンペナールツやガビリアを含む強力な逃げは、イネオスや現在リーダーチームのグルパマの脅威ではなく、逃げ切りを容易に許してもらうことが出来た。逃げ集団の争いは残り20キロくらいから激しくなり、少人数あるいは一人で独走したいカンペナールツがアタックを繰り返すとどんどんと集団は小さくなっていく。結局アワーレコードホルダーのアタックは煮え切らぬまま4級山岳に突入した。激坂区間カルボーニがカンペナールツを突き放したが、さらにその後方から飛んできたラフェのペースが素晴らしい。ラフェは合流することなくそのまま独走を選択し、ゴールラインでは20秒を得て確信のガッツポーズを見せた。この山で遅れた目立った総合勢もおらず、今年のジロのサプライズ勝利の系譜に名を連ねる平和な一日となった。なお、この日ユアンDNSサガンがチクラミーノジャージにお色直しをしている。

 

第9ステージはついに総合争いの本格化の日である。ジロも半分近く消化していながら、いまだ総合争いはほとんど起こっていなかった。今日が最初の本格的な山頂フィニッシュであり、特にこの日は1級山岳にフィニッシュするのだが、その最後の1.4キロが未舗装の激坂区間であり、タイム差がつくのは必至だった。

 

この日も逃げ切りや前待ちを目指したアタックがかかり続ける。マーダーのような逃げ切りを目指す選手だけでなく、カルーゾといった総合エース格やダニマルやマスナダといった山岳最終発射台もアタックに加わった。確立に80キロを要した逃げを、3分ほどのタイム差でグルパマがコントロールする。その17人の中にはモレンマやボウマン、ストーラーといった選手を含んでいた。ステージを厳しいものにしたい元マウンテンバイカーをエースに据えるイネオスが中盤から牽引役を奪取すると、そのリードは少しずつ縮まっていく。逃げの協調が破綻しグジャールとサイモンカーが飛び出すと、それをボウマン、ストーラー、モレンマが追走を組織する。結局追走のボウマン、ストーラ―が先行する2人をキャッチし1分ほどのタイム差で残りの2キロに入った。逃げのための日かのようにも思われたが、イネオスがそれを許さなかった。まずはカストロビエホが未舗装路までのエスコートを終えると、ナルバエスが集団をまっすぐに引き延ばし、その後を受けたモスコンが集団にとどめを刺す。仕上げはベルナル自身のアタックで、残り400メートルでかっとんだベルナルは、ボウマンにミサイルと例えられた圧倒的なスピードで逃げ残りを全て捕まえ、そのままゴールラインに一目散に駆け込んだ。ツール覇者のベルナルにとって、実は初めてのグランツールでのステージ優勝だった。そして当然、初のマリアローザとなった。ベルナルの1回目の加速についていけたチッコーネとウラソフも、ミサイルのような2度目の加速には誰もついていくことが出来なかった。

 

ここまで常にタイム差を稼いでいるベルナルが山岳で最強なのは疑う余地がないが、その最大のライバルはこれまでエヴェネプールだった。最終日のTTを前に、ベルナルはどれだけタイム差をつけられるか、少なくとも1分半は欲しいと思われていたが、この日だけで既に20秒を得た。少しずつ綻びが出ているのが見える。特に、未舗装路での走りに不慣れだというのは、イネオスにとって大きなチャンスとなる。11ステージに向けて、エヴェネプールは未舗装路適性を見せつけ、戦意を削いでおく必要があった。

 

また、チッコーネが予想外の結果を残し続けている。初日のTTは抜いていたのかひどいものだったが、山岳では常にベルナルに次ぐ位置でゴールをしている。怪我に苦しむエースのニバリから、明確にエースの座を譲り受けることになった。これはフルームとGのあれを再演するきっかけになるのだろうか。

 

そして、こちらも淡々と良い成績をマークしているのがウラソフだ。こちらはTTでの成功こそ予想外かもしれないが、山岳でのこれは期待通りというべきだろう。ベルナルの視線も少しずつ、エヴェネプールからウラソフやサイモンのようなピュアクライマーへと移っていくのを感じる。

 

1週目の終わりは中盤にスプリンターには微妙な山岳を含みながら平坦にゴールする、いかにもサガン向きなステージ。これまで通りボーラの作戦がさく裂しスプリンターを脱落させるのか、あるいは純粋なスプリント勝負をするのかが注目だった。昨年も、今年もボーラはサガンのためにチーム全員を投入しての牽引を行ってきたが、どちらも勝利には結び付かなかった。第5ステージではタコの逃げ切りを許すだけでなく、アシストが不足してしまい集団先頭をチモライに譲ってしまった。ポイント賞を目指すサガンにとっては大きなミスだっただろう。

 

御託を並べたが、結局ボーラの作戦が奏功した。ブッフマンのための山岳アシストも豪華に使いきり、集団を引き延ばすと、メルリールやフルーネウェーヘン、ニッツォーロを脱落させ、そのままゴールラインまで集団先頭に位置し続けた。オスとボドナールというサガン親衛隊を最終局面まで残すことが出来た。モラーノが早駆けした際も後ろにガビリアがついていながら自ら落ち着いて反応し、スリップストリームを利用してスプリントを開始。結局いちばん美味しい展開だったガビリアも伸び切らず、完璧な勝利となった。

 

 

初週は、不安要素の多いエース級の明暗がはっきりとする中で、各ステージはサプライズに満ちたものになったと言える。チーム力でトップに立っていたイネオス、ドゥクーニンク、バーレーンの3チームは、それぞれ思い通りのレースとはなっていないように思うが、その中でもいい展開に持ち込んでいるのがベルナルだ。現状では背中の不安を完全に払拭する果敢な、しかし落ち着いた走りをしている。とはいってもサブエースのシヴァコフを落車で失ってしまい、ダニマルをサブエースに繰り上げざるを得なくなった。ベルナルの背中に爆弾があることを考えると、ダニマルを使い捨てるようなことは難しい。山岳でのカードが減ったのはシヴァコフの実力以上に重くのしかかるかもしれない。

 

また、エヴェネプールは初の10日以上のレースの中で体調管理に苦しんでいるように思える。そのサブエースであるアルメイダも寒さで多くを失ってしまいサブエースとしての立ち位置にはもういない。グランツール総合を争うチームとしての経験の浅さは、どうせ最終日までマリアローザを着る必要がないということを考えれば気楽に思えるかもしれないが、体調管理やポジショニングでミスが見えるように感じる。

 

そして初日のTTは不調ながらも最初の山岳で好調さを示したランダは落車に巻き込まれてリタイアとなってしまった。カルーゾやビルバオといったサブエース格は残っているし、マーダーのステージ勝利もあった。さらに彼の山岳賞といった目標も残ってはいるものの、厳しい初週となっている。

 

翌週はいきなりグラベルロードから始まりゾンコランフィニッシュもある。ベルナルの言葉を借りるなら、1週は秒差の争いだった。しかしここからは分差の争いとなってくる。総合争いはまだまだ始まったばかりである。ミラノで笑うのは誰か、まだまだわからない。

 

最後にとても大事なことを忘れていた。第10ステージの中間ボーナスタイムスプリントをめぐって激しい争いが起こっていた。ボーナスタイムを目指して駆けたのはドゥクーニンクのエースエヴェネプール。それに対するイネオスの作戦はナルバエスとモスコンというスプリント力に優れたアシストがタイム差を潰すというもののはずだった。しかし集団先頭に位置し続けたガンナが彼らのために加速をすると、ついて行ったのはベルナル自身だった。ドゥクーニンクのリードアウターたちは誰もそのスピードについていけないが、唯一ガンナと比肩する現役クロノマンのエヴェネプールだけが自らついていく。そのまま再加速したエヴェネプールはベルナルをもかわし、3秒を獲得したかに思えたが、その最高速のリードアウターの全くの横から、ナルバエスが飛び出し、3秒をさらっていった。ナルバエスが3秒、エヴェネプールが2秒、ベルナルが1秒をとるという結果だけを見れば、ナルバエスは他のライバルからの1秒を潰してしまうだけの行為だったが、何よりもレースを盛り上げたし、彼の未来が何よりも楽しみになった。

 

エヴェネプールは怪我明けとはいえ、この2人は誰がどう見ても最強のクロノマンである。そのトップスピードはドゥクーニンクのアシストを全員置き去りにしていった。それをついていくだけで楽だったと言い切るのだからベルナルも凄まじいが、その最高速からさらに飛び出してベルナルを抜けるエヴェネプールも凄まじいし、そのラインの大外から飛び出せるナルバエスのスプリント力はさらに何倍も素晴らしい。既に春先のクラシックでマチューのアタックに唯一ついて行き、80キロを彼とともに走っているなど、石畳を含めたクラシックでの適性も見せていた彼だが、イネオスの山岳アシストとして働ける登坂力とあのスプリントがあればアルデンヌクラシックなどでエースを張っても何らおかしくはない。バルベルデの再来なるだろうか。

 

これまで、イネオスはグランツール総合に特化しており、クラシックははっきり言ってクヴィアト任せだった。さらにこの数年はクヴィアトももう1人の頼みの綱のモスコンも不調であり、全く結果を残せていなかった。しかし、今年からは全く違う様相を呈している。もちろん一番大きな変化はピドコックの加入だろう。ベイビージロを制し、MTBをぶっちぎる登坂力とバイクコントロール、さらにワウトに並び立つスプリント力と、最強クラシックハンターに必要な要素を全て持っている。もちろん、ジュニアのパリルーベも制しており、石畳だろうと関係ない。モニュメントの全制覇だって夢じゃないだろう。だが、変化はそれだけではない。ファンバーレは北のクラシックで最も安定した結果を残し続けたライダーの1人である。出た全てのレースでトップ10フィニッシュをしており、特にドワルスドールフランデーレンでは優勝も果たした。既にグランツールのアシスト一軍の座を確かなものにしているが、元来の目標であるクラシック戦線の強化という目的もここにきて達成されようとしている。

 

さらに荒れた展開でも残れるスプリンターのヘイターの成長も著しい。石畳の激坂フィニッシュというクライマーにしかチャンスのないようなレイアウトで、ミゲルアンヘルロペスを振り切って独走ゴールしているその脚質は、これまたワウトを思わせるようなものだ。そして、モスコンもしっかりと復調を見せ、既に今季2勝、そして今ジロでもベルナルの最も大事なアシストの1人となっている。

 

これだけのメンツが集まると、さらに相乗効果がある。それがイネオスクラシック班のウルフパック化だ。平坦をエスコートするガンナだってカンチェラーラのようにエースになれるかもしれない。その先に待っているのはクヴィアト、ピドコック、モスコンに、さらにはファンバーレやナルバエス、ヘイターというオプションが存在する。もしアルデンヌなら、さらにアダムやカラパスだって十分に勝利を狙うことができる。これだけの巨大戦力は、イネオスにしか実現できない。来年以降の大きな楽しみが出来た中間スプリントだった。もちろんそれは第9ステージの裏でピドコックが2位のマチューを1分振り切って独走したMTBでの勝利もあってこそである。ていうかピドコックやばすぎだろ

ジロ第5ステージまでを振り返る

グランツールとは、僕にとってはイネオスの総合優勝への争いを応援するものである。しかし一方で、グランツールだからこそのサプライズとドラマも存在する。グランツールだからこそ逃げにチャンスが与えられ、たとえば今回であればタコファンデルホールンのようなヒーローが生まれる。たとえばこれがワンデーや短いステージレースなら、他のチームが躍起になって逃げを捕まえただろう。だからこそ、僕はグランツールが大好きだ。それぞれが別の目的を持って、或いは同じゴールを目指して争い、時には協力し、同じレースを作り上げる。これはとても美しい。そんな今ジロの第一週を振り返りたい。

 

今年のジロも、開幕は短距離のTTから始まった。大本命はやはりフィリッポガンナで、直前のTTのリザルトから来た不安視を一気に吹き飛ばす圧倒的な勝利を見せつけ、初日のマリアローザを獲得した。イネオスの最初のノルマをしっかりと達成した。ステージ争いはガンナが凄すぎてほぼノーコンテスト状態だったが、総合勢の争いも見逃せない。大注目はDQTのエース2人がどれだけのタイムを残すのかと、それに対して純粋なクライマーであるサイモンやベルナル、ウラソフがどれだけタイム差を失わずに済むのかといったところだった。中でもエヴェネプールは去年のイルロンバルディアでの骨盤骨折以来、8ヶ月ぶりの復帰レースであり、どれだけのコンディションなのか、誰も予想が付かなかった。

 

最初に良いタイムを残した総合勢はTTが得意とは到底思えなかったウラソフだった。これを更新したのがアルメイダとエヴェネプールのクロノマンコンビで、それに追随したのがラブニール覇者のフォスだった。この4人以外は概ね似たようなタイムに位置し、ランダとダンマーティン、バルデ&ヒンドレーがタイムを幾らか失っただけだった。また、2日目のボーナスタイムでガンナからマリアローザ奪還を目指したスプリンターもいたかもしれないが、そもそも2位から10秒も秒差を奪っていて、勝負にならなかった。

 

2日目は最初のラインレースであり、スプリンターのための1日となった。逃げもファーストアタックがそのまま容認され、唯一設定された山岳ポイントの争いもそこから行われた。招待枠のプロチーム3チームから各1人が出ての逃げで最初の成果を持ち帰ったのはエオロコメタのアルバネーゼで、その後は逃げも集団も着々とゴールへと歩みを進めた。逃げきりなど許されるわけもなく、集団は高速でゴールスプリントへとなだれ込む。最も良い形を作ったヴィヴィアーニとニッツォーロすら届かない最速の男は、ユアンでもサガンでもガヴィリアでもなく、アルペシンのメルリールだった。アルペシンの快進撃は凄まじい。マチューだけのチームかと思っていたが、全くそんなことはないようだ。メルリールもフィリプセンも勝利を量産している。いつまでプロチームにとどまっているつもりなのかと言いたくなるほどだ。ポイントランキングでも勝利数ランキングでも、多くのワールドチームを上回っている。というか、このプロチームより勝ち星を稼いでいるのは、ドゥクーニンクとイネオスとユンボという最強3チームだけである。ポイントであればUAEもこのチームを上回っているが、やはりUAEも昨年の最強チームの一つだった。チームというよりポガチャルが凄かっただけかもしれない。

 

そんなこんなで早速チームの目的を果たしてしまった。逆に、プロチームに最初のマススプリント勝利を明け渡してしまったワールドチームは今後どうやってリベンジをしていくのかが楽しみとなった。

 

さらにもうひとつのトピックとして、フルーネウェーヘンの復帰が挙げられる。ハッキリ言って、かなり失望した。ヤコブセンと非公式に会っていたことを勝手に暴露し、さらにそこで謝罪のひとつもなしに良い会合だったとはどういう神経をしているのか。さらに、その暴露後に特にひとつの広報もなく、淡々とフルーネウェーヘンでスプリントを狙っている。今のところプロトンが彼に勝利を与えることはしていないが、あまり気持ちよく見ることが出来ない。ヤコブセンはいまだリハビリの途中であるし、デッケルのリードアウトやボトル運びから少しずつプロトンに受け入れられていく過程を踏むものだと思っていた。それをすっ飛ばし、さらにはジロ開幕前日に彼と会ったのは公にしない約束だったし、謝罪をしようともしなかったとヤコブセンに言われて何故平然としているのだろうと思ってしまう。このチームのいざこざとしてはトニマルとルークロウがやりあってツールを失格になったのが記憶に新しいが、そのときは2チーム揃ってふたりの謝罪動画をすぐに撮っていて、中々好印象だっただけに残念だ。是非ともサガンとヴィヴィアーニとガヴィリアはこれからもフルーネウェーヘンのチャンスを摘み続けてほしい。

 

第3ステージは、逃げ切りか、スプリントフィニッシュか、どちらとも取れるレイアウトだった。リーダーチームのイネオスはスプリンターを抱えていないが、ゴール直前のこぶを利用して、モスコンやナルバエスといったクラシックにも平地にも強いアタッカーが飛び出すこともあるかもしれないとみていた。この日の逃げは8名。特にビッグネームは存在しなかったが、イネオスがタイム差を容易に与えると、それを途中の山岳でボーラが猛烈に引き戻しにかかった。サガンのためにスプリンター勢を多数脱落させることには成功したが、肝心のボーラのアシストもほとんど使い切ってしまい、雨の直線路を引きたいチームが現れない。統率の取れない集団に対し、最後の逃げ残りの2名からパワーで飛び出したタコファンデルホールンが独走に持ち込むと、なんとそのままプロトンを振り切ってしまった。2年間ユンボにいながらクラシック班のアシストとしての存在に甘んじ、今シーズンのプロ契約すらままならなかった中でつかみ取った初グランツールのチャンスに、いきなり勝利の栄光を得た。これまでワールドチームながら未勝利に苦しんでいたアンテルマルシェも救うこの1勝はかなり大きい。昨日に続いて、サプライズな勝利となった。

 

また、特にこのステージはガッツポーズが素晴らしかった。年間を通してもかなりの上位に入ってくるんじゃないだろうか。信じられないといった表情での渾身のガッツポーズはとても感動的で、一気にファンにさせられた。ユンボの元チームメイトたちもすぐさま彼のもとに駆け寄り祝福していて、彼の人柄が見えるものとなった。

 

続く第4ステージも、逃げ切り、そしてサプライズなものとなった。山岳賞や逃げ切りを目指して、逃げ集団はなんと25名となった。その中にはデマルキやレインタラマエといった選手も含んでいた。雨のひどかったこの日、ガンナが一人引きでマリアローザに別れを告げると、集団でもついに総合争いが勃発した。最初にチッコーネが加速するとそれに呼応するようにランダもアタック。ついていけたのはウラソフとベルナル、ヒューカーシーの3人だけだった。ペースの上がるエース集団をしり目に逃げ集団も最終局面へと入っていた。デマルキを振り落としたドンブロウスキーが淡々とペース走に持ち込み、そのまま逃げ切り勝利。惜しくもステージ2位となったデマルキにもマリアローザが転がり込んできた。また、集団は先ほどのエースたちを先頭に、11秒遅れでエヴェネプールやサイモンのグループ、さらにその後ろにブッフマンやニバリといった具合だった。また、この日雨と低気温に苦しんだジョージベネットとアルメイダが大きくタイムを失い、総合戦線から脱落することとなった。

 

ドンブロウスキーはベイビージロを制覇しスカイ入りもした期待の若手だった。しかしプロでは勝ち切ることが出来ず、ついにこれがヨーロッパでの初勝利。翌日に30歳となる青年に大きなプレゼントとなった。一方で、DQTとユンボの総合エースがそれぞれタイムを失い、戦略変更を迫られた。つまり、DQTは当初のアルメイダエースエヴェネプールアシスト耐性を諦め、エヴェネプール1本でベルナルたちに挑むことになる。怪我からの復帰明け最初のレースで最初のグランツール、最初の2000メートル級での争いとなるだけに、あまりに未知数なところばかりだが、その分ワクワク感もひとしおだ。また、ユンボでもベネットを諦め、フォスの総合シングルフィニッシュとステージに切り替えたように見える。トビアスフォスはベルナル、ポガチャルのようなラブニールの2年後にツール制覇という流れに乗ることは難しそうだが、ここでどこまでその大器の片鱗を見せることが出来るのか、期待が集まる。エヴェネプールもピドコックも出てなかっただけじゃんと言ってる僕を黙らせてみてほしい。

 

 

第5ステージはようやく天気にも恵まれ、落ち着いた一日となるはずだった。逃げも早々に決まり、それもプロチームだけのほぼノーチャンスなもの。スプリンターチームが吸収するのは時間の問題で、地元選手が集団から飛び出して凱旋走行をする余裕すらあった。マリアローザを率いるイスラエルの牽引も落ち着いたもので、集団牽引に慣れていないであろうイスラエルも、フルームの5勝目に向けて、まずははずみをつけられたのかなと思う。しかし、その落ち着いた日も、ゴール付近のコーナーが多いレイアウトに近づくに連れ、緊張感を増していく。最初の犠牲者はシヴァコフだった。特に何でもない広い幹線道路で位置取り争いが始まると、イネオストレインの最後尾につけるシヴァコフは前後に行き場を失くし、側道に乗り上げ、そのまま鎖骨を負傷して完走後にリタイアとなってしまった。さらに残り4.5キロ付近で中央分離帯とそれを警告する路上スタッフに昨日勝者で山岳賞のドンブロウスキーが追突すると、その弾かれたバイクに巻き込まれる形でランダなども落車してしまう。特にランダの状態は映像でもわかるほどにひどく、すぐには立ち上がれない。結局、救急車に運ばれる形で好調のエースはレースを去ることになってしまった。

 

集団前方ではスプリントに向けてトレインの位置取り争いがより加速する。最もいい形を作ったのは、ヴィヴィアーニで、それに飛び乗る形でニッツォーロもいい形で発射した。しかし、そのイタリア人2人の影から高速で飛び出し、ゴールラインを最速で通過したのは、オージースプリンターのカレブユアンだった。第2ステージではチームとして位置取りに失敗し全くスプリントに絡めず、第3ステージでもボーラの山岳牽引で脱落していた彼が、これまでの鬱憤を晴らす勝利となった。今年は全グランツールの出場を表明し、その全てでのステージ優勝を目標としている彼にとって、まずは第一関門の突破である。

 

その素晴らしい勝利の裏で心配なのが、落車した面々である。シヴァコフとドンブロウスキーはともにゴールしたものの、翌日にDNSとなった。ランダも既に述べたようにリタイアとなった。シヴァコフはサブエースを務めていながら、あまりに落車が多すぎる気がする。昨年のツール第一ステージでの二度の落車は記憶に新しい。あのコンディションでの落車はしょうがない部分も多いのだろうが、その前哨戦のドーフィネでも落車しているし、今年もジロ前哨戦のツアーオブジアルプスで落車している。グランツールではミスなく走ることが求められる。ノーミスだったからこそ18年はフルームを差し置いてGがツールを制覇した。シヴァコフがエース候補として期待されていながらどうにも開花しきらないのはこういうところなのではないだろうか。ゲーガンハートはしっかりと結果を出し、今年もLBLでその実力を見せつけた。同じくもう一人の次世代エース候補のイヴァンソーサは移籍の噂も出ているし、是非ともエースとしての位置を確たるものにしてほしかったのだが、残念だ。また、イネオスの選出にも少し不満がある。ベルナルがエースなのは当然文句はない。ベルナルの背中の爆弾がいつ爆発してもおかしくないのもわかる。ならば、だからこそ安定感の高い選手をサブエースにもってくるべきではなかったのだろうか。カラパスやアダムは適任だったと思う。グランツールでのエースそもそも余らせすぎ。別にシヴァコフが開花しなくても余ってピドコックで渋滞してるんだし、もっとベルナルを安心させ、さらにプレッシャーの分散させられる起用法をしてみてほしかったと思う。

 

さらに、最高の気持ちで眠りについたであろう山岳賞ジャージのドンブロウスキーは一転最悪な誕生日になってしまった。ランダと共にリタイアしたがどちらも好調だっただけに残念だ。やはりああいうテクニカルなレイアウトはどうかと思う。バリケードは例の一件からかなり改善されてきているし、ダウンヒルスプリントももうないだろうけど、その前のタイトコーナーや突然現れる中央分離帯など、もっと改善していくべき要素は多いように思う。落車リタイアがあっただけで、その日気分よく眠るのが無理になってしまうのだから、UCIはもっとしっかりと努力をしてほしい。

 

 

 

第10ステージまでを振り返るに続く。

白馬考察のオタク

ジロでひとり最低な生活リズムになることが予想されている。その期間にひとつポケカでの目標を立てた。それが、誰よりも白馬バドレックスと連撃インテレオンVMAXに精通するということだ。そのスタート地点として、まずはジロの予想と、現時点での白馬のデッキ案や、それについての考察をまとめる。

 

まず、ジロのステージ構成から。総合以外の観点で言えば、スプリンター向けのステージは少なく、パンチャーや逃げにチャンスが多いグランツールであると言える。スプリンターとしてはアルペシンフェニックスのティムメルリエ、ボーラのサガンコフィディスのヴィヴィアーニ、ユンボデッケル&フルーネウェーヘン、ロットのカレブユアン、クベカのニッツォーロ、さらにはUAEのガヴィリアが有力だろう。

 

プロトンの有力スプリンターで今回参戦していないのはファンアールトやベネット、アッカーマンくらいしかいないような、かなり豪華な布陣である。登れるスプリンター代表のサガンも復調の気配を見せている。ポイント賞の最右翼だろう。しかし、チームがサガンとブフマンというふたつの目標を抱えており、ジャージ奪取のためにどれほどチームがフォーカスするかは疑問である。

 

パンチャーや逃げ屋としてはなんと言ってもプロトン一の逃げ屋のデヘントがいる。昨ツールでは早々に離脱者が続出してしまいユアンの傍で待機せざるを得ない展開が多く、また未勝利で一年を終えてしまったが、今年は既にカタルーニャで逃げ切り勝利を決めている。まずは着実にタイムを落とし、第12ステージを舌なめずりして待つことだろう。これほどデヘントに向いたステージもない。また、期待の若手シャンプッサンも見逃せない。

 

そして、なんと言っても総合である。ディフェンディングチャンピオンのゲーガンハートはツールデビューを目指し、ジロは回避することになっている。TTの総距離は40キロに満たず、TTスペシャリスト系の総合エースの代表格、ログリッチェやポガチャルがいないこともあり、クライマーにチャンスが多い。グランツールレーサーとしてはベルナル、ウラソフ、ランダ、エヴェネプール&アルメイダ、カーシー、ダンマーティン、ジョージベネット、マルクソレル、サイモンイェーツ、ヒンドレー&バルデ、ニバリがエントリーをしている。

 

その中でもアシストの充実度はイネオスとバーレーンとドゥクーニンクが抜けている。特に、ドゥクーニンクのコンビはプロトン屈指のクロノマンであり、そのリードは非常に大きい。復帰初戦のエヴェネプールは既にアルメイダをアシストすることを明言しているが、この規格外の天才の言葉をそのまま鵜呑みにしていいものかと不安にすらなってしまう。僕は何と言ってもベルナル推しであり、マリアローザ予想はベルナルとする。しかし、これらに名前の挙がったほとんどの選手が直前のリザルトを持っておらず、ツアーオブジアルプスのクイーンステージを制しそのまま総合優勝を決めたサイモンの状態の高さはかなりのアドバンテージであろう。18年の忘れ物を取るには絶好のチャンスである。また、これまでグランツールレーサーとしてはアダムよりサイモンといった感じだったが、アダムのTTでの改善や山での進化が著しい。最強の双子の最強はサイモンであるということも改めて示す必要があるのではないだろうか。

 

そしてその総合を占う上で、山岳とTTのほかにもうひとつ重大な要素がある。それがストラーデビアンケ風のステージである第11ステージだ。35キロの未舗装路とシエナへの激坂石畳がプロトンを待ち受ける。今年と昨年の覇者マチューやワウトは出場せず、またグランツールの中の一日である以上、あれほどの厳しいレースになるのかは疑問が残るが、その中でも今年3位のベルナルはここでリードを築く可能性がある。逆に、今年のアルメイダはアラフィリップのアシストとしての参戦だったが、ベルナルから6分半も遅れてのゴールとなっている。また、ブフマンに至ってはエースでありながらさらにアルメイダから遅れてのゴールとなっていた。ここでの大シャッフルは免れないだろう。

 

そして、このジロはTTに始まり、TTで終わる。なんといっても優勝候補はフィリッポガンナであるのだが、ここ最近はあまり調子が上がり切っていない。ティレーノではファンアールトに敗北を喫した。TTでの敗北は実に1年ぶりで、その時の相手のエヴェネプールも今回出場している。直前のロマンディでは2度のTTを9位、10位となっているのは激坂があまりにキツかったからか、ミラノサンレモ前後で報じられたインフルの影響か。ガンナが狙わずともデニスGポートと激坂TT最強が3人も揃っており、実際プロローグでは1-2-3フィニッシュをしたことから、ガンナはジロにパワーをセーブした可能性もあるが、少し不安が残ることにはかわりない。他のクロノマンにはカンペナールツやダウセットがいるが、やはり本命はガンナ、アルメイダ、エヴェネプールの3人だろう。

 

そして白馬に話を移す。現在は前のガルシア杯の記事で書いたように、チラチーノ型で組んだ。前のめりなデッキでありスタンプ耐性の高さは使い勝手がいいが、1ターン目の動きが重要なこのデッキにおいて、雪道を採用するのは正解なのかという疑問が残った。今後試したい組み方は、まずは裏工作軸である。TAGチームに対してクイックシューターの打点補助がかなり偉いこともあり、これを試さない手はない。また、デデクロモリモリで場にこういったカードを残さない前のめりな組み方も試したい。どのデッキでもエネ加速はメロンと手貼りに頼るのか、あるいはモスノウやユキメノコを入れるのかも考える必要がある。あるいは手貼りターンを作るためにフリージオなんかを試しても面白いかもしれない。面白いだけかもしれない。

 

同様に連撃インテレオンも色んな組み方が考えられる。裏工作軸はモミを打ちやすいが連撃エネルギーがサーチしにくく、そのためにオクタンを立てるとベンチ枠が狭くなってしまう。インテVMAXの枚数が限られてしまうと特性の回数が減ってしまう訳だが、それがどれだけ試合に影響するのかを検討したい。当然連撃エネルギ―を触りやすくしつつ、色んなカードにアクセスできるという点ではチラチーノも優秀である。技の性質を活かすなら、モミを最も打ちやすいこの2系統が候補に挙がると思う。そして、特性に注目した場合、インテレオンを裏に置きながら前でクワガノンVやフリージオを使うという組み方も考えられる。

 

これらの全てに可能性を感じる。ジロを全力で楽しみつつ、JCSに向けてどうにかこれらを突き詰めることを目指す。

アクアリウム立ち上げ 

寝付けない朝4時ごろ、なんとなしにYouTubeの動画を垂れ流していると、知らぬ間にアクアリウムの動画に辿り着いていた。春のクラシックが一段落し、ジロに向けて全員が膝を曲げているこの時期に緊急事態宣言が出されてしまい、あまりに単調なゴールデンウィークになってしまうのではないかという危機感からだろうか。アクアリウムを自分でもやりたくなった。これまで水棲動物を飼育した経験など、小学校でのメダカやザリガニ程度しかなく、当然なんの知識もなかった。そんな僕だが朝4時から色々と調べ、すぐに行動に移しその日の夜にはもう水槽立ち上げを完了するまでになった。今回はその過程を記すとともに、今後の水槽の展望についても語りたい。

 

今回の水槽立ち上げに際し、意識した点は2つである。初心者に優しいものであることと、勢いを大事にしながら満足感を得、継続に繋げることである。YouTubeアクアリウムについて語ったショップ店員のブログなどを参考に、手入れとレイアウトの手軽そうな30センチキューブ水槽を用いて、ヴィヴィッドな色調の熱帯魚を迎えることにした。そしてそれはネオンテトラに決まった。

 

ネオンテトラ(10匹) | チャーム

水質の変化などに強く、また気性も温厚で初心者にも扱いやすい魚のようだ。色も求めた通りのものである。また、店員に勧められ、ヤマトヌマエビも購入した。こちらはキレイや可愛いといった言葉が似合うものではないが、苔などを食べる掃除屋の役割を果たしてくれるらしい。

 

対して、僕が動画で見て憧れた水槽は水草を芸術的に配した、さながらひとつのインテリアのようなものだったが、それは断念し、慣れてから挑戦することにした。ひとまず簡易的なレイアウトのために人工の水草もどきと天然の水草を購入し、様子見をすることにした。そのようにして出来たのがこれである。

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2万円すらかけずに、勢いだけでやったものだが、意外としっかりしている。奥で何か浮いているのは気のせいである。あとは生体が健康に過ごしてくれるのを願うばかりだ。水槽や生体にも既に愛着が湧いている。

 

今後の目標は、まずこの水槽をしっかりとレイアウトすること。特にエビの主張が激しすぎ、ネオンテトラのいない部分に目をやった時のハイライトのなさが寂しすぎるため、底には水草や苔を充実させていきたい。また、ネオンテトラを安定的に混泳させるために、少し大きな魚も導入したい。現在はハ二―ゴールドグラミーという魚が候補だ。そして、それが実現した暁にはもう少し本格的なレイアウトに挑戦したい。つまり、事前に外観をイメージし、設計図に起こして緻密に風景を作り上げていくようなものである。今ふと思ったのは、それでステルヴィオなんて再現することが出来たら最高である。

 

今後もこのアクアリウム系のブログを続けられるように頑張りたい。あと普通に楽しいからみんな一緒に始めよう。有識者はおすすめの水草とか、レイアウトの草案の作り方とかそれをどうやって勉強するかとか教えてください。ではここまで読んでくれてありがとう。